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松尾諭「拾われた男」

ごく特定の番組以外、なんとなくテレビを付けっぱなしにして見ているという事がなくなってずいぶん経つんですが、見なくてもなんとかなるもので全く生活に支障はないものの、年末などのテレビを見る機会には見たことも無いタレントやお笑い芸人が大量に出てきて、驚くなんていうのもこの数年の恒例になっております。

なんで、映画なんかが俳優さんの情報を知る数少ない機会なんですが、邦画もあまり見に行かないのでなかなか知っている人が増えていかない様な状況なんですが、数年前とても話題になった「シン・ゴジラ」を見に行った際、長谷川博己さん、高橋一生さんという存在を知ると共に、嫌な感じ且つ圧が強いエリート設定にもかかわらず、若干滑舌が悪い事により本当は可愛い出来損ないで、どこかでそういったオチが来るのではないか?と最後まで注目したが結局何も起こらなかった泉修一役の松尾諭さんを知ったのですが、その後なんとなく行って後悔したそれの応援上映(女性多めの)で、映画終了後のトークショーの中継を見て役とは真逆の面白松尾諭さんを見て興味を持った次第であります。

それから少しして、文春のページで始まった御本人の自伝的エッセイを見つけまして読み始め、現在も進行中なので更新を楽しみにしております。

落とし物を警察に届けることからキャリアが始まった猛烈な運の良さ、あの人気女優の運転手をしていた話、そして酒に溺れて堕落していく様、もつれた恋愛事情などを赤裸々に綴っており、一人の俳優が誕生していくまでの過程が記録されております。

このエッセイにある時急激に引き込まれた理由の一つとして、この人もまた、私達が一生懸命クラブミュージックのレコードを買っている時期、同じく青春を送っていた地でジャズやそういったものを買っていたり、また機材を買いに行く描写が出てきたり、アルバイト先に勤めていた仲間からヒップホップの手ほどきを受けていたりと、自分と通過した時代が近く同じ様なものを聴いていたということが重なったからでありまして、我々の周りにいた人たちのその後の話みたいなもんだなと。さらに、松尾さん自身が描いた挿絵を見たらば、本人が着ている服の胸にはストーンズスロウのロゴがあり、なんだなんだと。

ヒップホップを通過したおじさんには妙に優しく接してしまいがちな私なので、このエッセイもそれ以降ヒップホッパー(元も)必読エッセイとして読むようになった次第であります。

強運にも恵まれた理想的なシンデレラボーイ像に見えますが、これが何年にも及ぶ先の見えない宙ぶらりんの状況を耐えしのぎ、掴んだ今の役者としての立場だと考えると大変だったろうなとしか思えなくなってきますし、ここで公開している部分以外にもたくさん努力されているとは思いますが、こうして面白い部分と泣けるところを抽出して絶妙に泣けない与太話として書けるストーリーテラーとしての能力にただ感服であります。




松尾諭「拾われた男」

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