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ラップは何を映しているのか――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで / 大和田 俊之、磯部 涼、吉田 雅史

3月終わりに発売し話題となっておりましたこちらの書籍を私も遅ればせながら読了しました。

アメリカ、日本のラップミュージックについての最新の状況から過去まで、社会情勢を踏まえて3人の識者が語り合うという内容の本なのですが、まず全て読み終えて真っ先に思ったことは、まるで週刊誌じゃないかと思うほどの鮮度の高い情報が載っていて、とにかくなるべく早く読んだほうが良い生物(なまもの)ということでしょうか。

国内であれば、アルバム発売から僅かしか経っていない超直近とも言うべきゆるふわギャングや、この数年の大きなトピックでありますデモやフリースタイルバトルなどからパイオニア達の話まで、海外だとトランプ政権前後の雰囲気から、オールドスクール期~ゴールデンエラまで、政治的なものからそういった部分を排してダンスミュージック化しているところまでを話し合っております。

オススメしてくれた友人と話していた話題や考えが、この本の中で話されている事と符合したりする部分も結構あったり、また知らないことを沢山知る機会になったりと、とても面白く中身の濃いものだと思いました。

終始固有名詞が多く、後ろに書かれている注釈の量が莫大ですので、初めてこのジャンルに興味を持って読んだ人は、恐らく読むのがものすごく大変なんじゃないかと思いましたが、ある程度のヒップホップファンである私のような仕事しながら音楽を聴いている人間でも、ほとんど注釈無く読めましたので、ヒップホップに興味ある人は現在のシーンを込みとした全体像を知るのにも最適な書籍と言えます。

また、あまり海外のラップを知らなく興味がある日本のラップファンや、逆に海外のラップファンで日本の作品を知らない人も、今のツボをキッチリ押さえつつ過去の必聴なものを知る本として、ディスクガイド的な役割で機能するのでは無いでしょうか。

著者の方々のMigosやゆるふわギャングを気に入っているという発言を読み(皆結構いい年)、自分自身もいつまでもこういう気持ちを持ち続けれるよういたいなと。



ラップは何を映しているのか――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで / 大和田 俊之、磯部 涼、吉田 雅史

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アマゾン商品説明より
画期的ラップ・ミュージック概論、登場。

アメリカ事情に精通する大和田俊之、長年ラップの現場に身を置いてきた磯部涼、批評家とラッパー/ビートメイカーを往復する吉田雅史。
三人のラップ論者が、日米のラップの変遷を語りつくす!
ヒップホップ・カルチャーの歴史を縦軸に、「トランプ後の世界」と「日本語ラップ」の現状認識を横軸に、ラップの潮流を通して、私たちの社会をもマッピングする一冊。

<目次>
●はじめに 吉田雅史

●第一章 ラップはいまを映しているか
ラップの定義について/ヒップホップ史の書き換え/BLMのアンセム「Alright」/チャンス・ザ・ラッパー発言に見る非政治化/トラップ・シーンの変化/酩酊感の正体/大統領選との距離/予想を裏切るトランプ/「Bad and Boujee」は反動なのか/デモとラップ/シカゴの時代

●第二章 USラップが映してきたもの
政治性を求めるのは誰か/『ストレイト・アウタ・コンプトン』の歴史操作/KRS・ワンのヒップホップ道/「The Message」再考/ゲームの始まり/ギャングスタ・ラップの二重性/ポスト・ソウル世代の政治感覚/宗教と陰謀論/女性ラッパーの系譜/エミネムとホワイト・トラッシュ/女性物を着るラッパーたち

●第三章 日本にラップが根づくまで
オーセンティシティとオリジナリティ/佐々木士郎(宇多丸)の危惧/ハードコア・ラップが右傾化した理由/『空からの力』という教科書/社会問題に対するメタとベタ/ポリティカル・ラップとしてのMSC/顕在化する地域性/方言に根ざしたビート/フリースタイル・ブームの行方/ダンス・ミュージックへの回帰/「It G Ma」ブレイクの意味/アメリカの影と向き合う

●あとがき 磯部涼、大和田俊之

●註釈

内容(「BOOK」データベースより)
アメリカ事情に精通する大和田俊之、長年ラップの現場に身を置いてきた磯部涼、批評家とラッパー/ビートメイカーを往復する吉田雅史。三人の識者によるラップ・ミュージック概論。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大和田/俊之
1970年生まれ。専門はアメリカ文学、ポピュラー音楽研究。慶應義塾大学法学部教授。博士(文学)。著書に『アメリカ音楽史―ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで』(講談社、第33回サントリー学芸賞)など

磯部/涼
1978年生まれ。主に日本のマイナー音楽と社会の関わりについて執筆

吉田/雅史
1975年生まれ。“ゲンロン佐々木敦批評再生塾”初代総代。批評家/ビートメイカー/ラッパー。『ele‐king』や『ユリイカ』誌などで音楽批評中心に活動。MA$A$HI名義でMeisoのアルバム『轆轤』をプロデュース(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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